ひとりごと

意味があったりなかったりします

檜皮葺

毎日の神社のお散歩コースにはAコース、Bコース、Cコースの3種類がある。

Aコースは王道の参拝ルートを通り、参拝して帰ってくる。Bコースは参拝ルートの一本左にある、細い道を通り、その終着点で王道ルートに合流し、Aコースと同様に参拝する。Cコースは最初の鳥居をくぐったら左手にある売店側へ方向転換し、200mほど先にある祖霊舎方向へ向かう。Cコースの場合は参拝しない。

 

 

「朝6時半に家を出るから」と前夜に父から伝えられ、当日は6時10分に起き、朝散歩に行った。昼間は気温がぐんと上がり過ごしやすいのだが、朝はかなり冷え込む。

コース選択を託され、私はAコースを希望した。昼になると神社までの一本道が渋滞するほど人が押し寄せるが、7時前は参道に誰もいない。

境内に着くとおみくじの木箱や、檜皮葺の屋根の張り替えの展示室が開いていて、すでに職員は来ているようだ。だいたい7時頃から神社の掃除が始まる。

この神社の本殿をはじめとした屋根は檜でできており、何十年もの間雨風にさらされ続けそろそろ寿命だということで、現在張り替え作業が行われている。檜を傷つけることなく、専門の職人さんがたったロープ一本でビルの3、4階の高さまで登り檜を剥ぐ。どの檜から材料をとるか、日当たりを考えてどの部分からどれだけ採れるかを一瞬で見抜き、木にロープをぐるっと回し、スムーズに登っていく。檜を少しも傷つけないという職人技。採って加工された檜は1.2mmずつずらして竹釘で打ち込んでいく。測ることはなく感覚でどんどん職人の手が進む。

このような伝統的な技術は日本各地にまだまだあるだろう。技術を継承していくのには時間がかかる。AIでも賄いきれない。神社に何度も足を運んでいるのに、こういった技術を知ったのはつい最近であることに少しの後ろめたさを感じた。後継がいないだとか、伝統が守られないという言葉の重みをやっと解像度をほんの僅かに上げて見ることができるようになったかもしれない。

 

2022.5.5